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――いったい何が起こったのだろうか。 頭では理解できるのだ。 今この目の前で起こった出来事を。 だが、自分のちっぽけな理性が、それを受け入れる事を拒んでいる。 こんな事は、ありえない、のだ。 ここは戦場だ、何が起こったとしても、不思議じゃない。いつ誰が死んでも、いつ私が死んでも、なんら特別なことは無い――至極当然のこととして受け入れられる。いや、それを覚悟して戦っているのだ。 そして、私の部隊が全滅し、生き残りがこの私たった一人になった事も。そしてすぐにも敵の攻撃によって、私の命が理不尽に散ろうとしているのも、それが戦場での日常なのだ。 敵の姿を確認することなく砲撃を受け、敵を捕捉した頃には部隊は半壊、敵に攻撃を開始しようとしたときにはほぼ全滅していた。こんな荒唐無稽な光景は当然――そう、当たり前なのだ。 なにせ、戦争の相手からして、異星からの侵略者だ。 この戦争は最初から荒唐にして無稽だった。 だからといって――だからといってこんな事が起こるなどと、誰が想像しえただろうか。 いまもまさに、その信じられないような出来事は続いている。 私の目の前で、甲虫をイメージさせる敵の機動兵器が、その多脚をせわしなく動かしながら、慌てふためいている。 唐突に、奴らの仲間が何体か撃墜されたのだ。 それが駆け抜ける様は、奴らのカメラには映らなかったようだ。 私の目は、はっきりとそれを捉えることができた。だが、それはあまりにも現実離れしすぎていて、受け入れがたい。 どうして、あんなものが…… 混乱した敵機動兵器の群れが、こちらへ突進してくる。 昔に見たドキュメンタリー番組で、サバンナの平原をカメラに向かって突進してくる水牛の群れ―― そんなものを想起しながら、私は皮肉っぽく唇の端を歪めた。 ――とうとう、これで終りか。 そう考えても、何も感情は浮かんでこなかった。後悔も、未練も、戦場に来る前に置いてきた。 ここにいるのは、ただの兵器だ。 兵器と化した男なのだ。 世界を守るために、弱者の武器となって戦う。 悪くない、最後だ。 それが妙におかしい気分で、含み笑いを漏らす。体中の力が抜けて、地面にへたり込んだ。そしてそのまま、座して死の時を待とうと、そう思った。 だが、地面に付いた手の平に伝わる妙な手触り。それが私の意識を引いた。 それは肉の感触だった。 奴らの熱線兵器にて焼き払われ、何も考える暇も、感じる暇もなく死に絶えていった仲間達の――屍肉の感触。 それに触れた手の平を見る。 粘つき、黒ずんだ血がこびり付いていた。 まるで無念を伝えるように、生き残った私に怨讐を願うように。 けれど――悪いな、私ひとりじゃ、奴らには勝てそうも無い。 私一人では…… だが…… だがせめて、せめて一矢でも報えたなら…… 次へ>> |