魔天聖地


 唇はすでに笑みの形を忘れ、強く上下の歯に圧迫される。噛み切った傷口から血をにじませ、私は奴らを睨んだ。そして、奴らに手も足も出ぬまま、一方的に殺されていった仲間達の屍を背後に、奴らに向かって突進していく。
 最早、手持ちの武器は携行のハンドガンしかない。
 それでも奴らに、傷の一つもつけられれば、皆の無念を少しでも晴らせる。
 そんな気がした。
 雄叫びを、上げる。
 頭の中ではもう何も考えちゃいない。
けど心が、心が叫んでいるんだ。
 奴らを、倒せと。
 狙いなど定めず、ただ一心に引き金を引き絞る。
 奴らにとっては、所詮豆鉄砲。何の損害にもなりはしない。むしろ被弾している事にすら気付かないかもしれない。
 それでも私は、奴らに全てを叩きこんでやりたいのだ。
 無念を、憎悪を、痛みを、悲哀を――
 そして怒りを!

 弾の切れたハンドガンを、力任せに投げつける。
 これで残されたものは徒手空拳のみだ。奴らの足元に取り付いて、拳が砕けるまで、いいや砕け散っても殴り続けてやる。気の済むまで、心のなすがままに戦い続けてやる。  叫び続けた喉はとうに潰れた。それでも私は腹の底から声を上げる。それが自分の全てだと言う様に、自分の全てを込めて叫び続けるのだ。
 もう、奴らは目の前だ。いくつもの偽足を動かしながら、こちらに向かって迫ってくる。あんなものに近付けば、爪先に弾き飛ばされるか、踏み潰されるかのどちらかだろう。だが――構うものか。
 突出した一体に向かって、全速力で駆けつける。その踝に取り付こうと飛び掛るが、意外なまでに素早いその動きを捉えきれず、そのまま地面に倒れ伏した。
 急いで立ち上がろうとするがもう遅い、義足の一本が、私を踏み潰そうと、その足底部が、目の前に迫り、視界が影に染まって……

 轟雷が響いた。

 錯覚かもしれないが、そんな音を聞いた。
思わず閉じていた目を開く。
 そこには、私を踏み潰そうとしていた巨大な足の底はなく、底のない青空が広がっていた。
 私は何事が起こったのか解らず、周囲を見渡す。
 見れば、私を潰そうとしていた機動兵器は胴体に大穴を開け、遅れて来た味方機の中心に突っ込んでいた。まるで――巨大な何かに撃ち抜かれたように。
 それでも奴らの突進が止まることはない。ますます勢いづいて、こちらへ向かってくる。  しかし、奴らの大地を揺るがすような足音に混じって、空気を切り裂くような、耳鳴りに似た轟音が聞こえて――次の瞬間には何かが奴らの一体を打ち抜いていた。
 動力部を破壊されたのか、そいつは大爆発を起こす。爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされてとうとう奴らの突進は止まる。
 だが、先ほどの耳鳴りのような音は鳴り止まず、次々と機動兵器たちをぶち抜いていく。
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