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「――上空より、大気圏突入してくる熱源あり!」 <<前へ
レーダーを注視していた策敵手が警告の声を上げる。 「こいつは……でかいぞ! コースは……『魔騎士』へ直進しています!」 「覇王の主砲で迎撃できるか!?」 「無理です! 速度が速くて――『魔騎士』以外でこんなスピードが出せるなんて……」 「当たり前だ! 今までの相手は所詮雑兵。互角以上の性能を持つ格上が出てくることなど、解りきった事だろうが!」 平井岳の檄が飛び、オペレーター達の悲鳴に似た驚愕が響く。 「『覇王』全速前進! 『魔騎士』の援護に向かう」 艦橋内部に緊張が走る。 これまでは『魔騎士』の一体で全て事足りる戦闘だった。だが、今回の戦いは、初めて互角以上の敵を相手にした実戦となる。 平井岳はモニターに捉えた敵機の姿を睨みながら、唾を飲み込んだ。 「頼むぞ、雅人……」 彼の中での戦争が、三十年ぶりに再び幕を開けたのだった。 「聞こえてるわね、雅人くん!」 「ああ――こっちも肉眼で確認した」 史子からの通信に雅人は冷静に対応する。 『魔騎士』の足元には、破壊されたバエルの残骸の山が出来上がっている。 すでに稼動している敵の機動兵器は存在しない――上空から迫る、巨大な敵影のみである。 まだはるかな上空……だが、すぐにでも敵機は地上まで降りてくるだろう。米粒ほどに見えていた敵機が、ソフトボール大に視認できるほどまで近付きつつある。 『魔騎士』は剣を左手に構え、右腕を敵機に向けて突き出す。 先手――必勝。 「グリーディナックル!」 雅人が叫び、『魔騎士』の鉄腕が飛ぶ。音速の牙が、巨大な鉄塊を暴食せんと迫る。 攻撃の予感を感じたのか、敵機は加速。鋼鉄の拳と正面から激突し―― 空中に火花が散る―― 衝突後、互いに削りあいながら均衡状態で静止していたが、やがて双方共に弾かれると地上へ落下する。 敵機の巨体は轟音と共に地面に墜落し、『魔騎士』の右腕は元あった場所へと戻ってくる。 激突の衝撃のためか、右手の装甲は焼け付き、ボロボロに剥がれ落ちていた。 だが、傷口が淡く光ったかと思うと、徐々に回復していく。十秒ほどで、以前と全く変わらぬ姿を取り戻した。 敵機はというと、地面に転がったままぴくりとも動かない。大気圏突入の熱で表面が焦げたのか、ただの黒い塊にしか見えないそれは、機能を停止させているかに見えた。 しかし――その表面に亀裂が走ると、一瞬にしてバラバラに砕ける。その破片を見ると、多層構造の装甲版に、ブースターを取り付けただけ……どうやらこれは輸送用のカプセルだったようだ。 輸送用――ならば、内部には運ばれてきた物が存在する。 砕け散った破片の中から一つの影が立ち上がる。 それは、人の形をしていた。 痩身の矮躯を包むように長い腕を組み、その背丈は、二十六メートルを誇る『魔騎士』よりも高い。青く輝く装甲に身を包み、尖塔のような頭部の一つ目(モノアイ)で『魔騎士』を見下している――敵の人型機動兵器。 「ついに……って感じだな」 雅人は敵機を睨みつけながら、小さく呟く。敵機から感じるプレッシャーに、挑みかかるように『魔騎士』は剣を突きつける。 「行くぞッ!」 『魔騎士』は剣を振りかぶり、敵機へと駆け出していった。 ―第一話 終― |