序章 始まりの終わり




序章 始まりの終わり

作:遠野 秀一 




 全ての始まりは、一ヶ月前から始まる。
 いや、厳密に言うならば、三ヶ月前の交通事故にまで遡るのだが、それは不幸な事故でしかなかった。それが始まるキッカケではあったが、そこには何者の意思も介在していなかった。一つの悲劇ではあったが、ただの不幸な事故でしかなかった。
 その事故で犠牲となったのは、柊木楓。
 明るく、笑顔を絶やさぬ少女だった。誰にでも分け隔てなく、その笑顔を向けられる優しい性格だった。少々お転婆で勢いのあり過ぎるところはあったが、みんなに愛されていた。
 だからこそ、それが始まるキッカケとなったのだが。
 始まりは、柊木司郎牧師が起こした女子高生誘拐殺人事件だった。犯人の名前からもわかるとおり、三ヶ月前に事故死した柊木楓の父が起こした事件である。
 柊木牧師は誰もが慕う好人物で、敬虔なクリスチャンだった。しかし、彼は一〇月中旬から下旬に掛けての二週間、娘と同年代の少女一三名を誘拐し、教会の地下室に監禁、少女一二名を惨殺した。残り一名は、事件解決に貢献した民間人達によって救出された。
 事件解決に貢献した民間人達とは、柊木楓の幼馴染達だった。彼等は逸早く柊木牧師の異変に気付き、独自に柊木牧師を調査していた。そして、彼等が行き着いた果ては柊木牧師の狂気だった。
 彼等が教会の地下室が突入した時、そこはまるで悪魔の巣窟のようだった。悪魔信仰者(サタニスト)が儀式で用いる魔法陣が所狭しに描かれ、まるで生け贄のごとく惨殺されていた一二人の少女。そして、狂気に堕ちた牧師の成れの果て。
 柊木牧師は、事故死した娘を生き返らせなかったのだ。いくら神に祈っても、娘は帰ってこない。だからこそ、悪魔に魂を売ってしまった。禍々しき悪魔信仰に走り、取り返しのつかない惨劇を起こした。
 しかし、これはまだ真の惨劇の始まりでしかない。
 本当の惨劇はこれから始まろうとしている。
 そう、これは惨劇の始まりの終わり。







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